「やっと妊娠できたけど、育っていかなかった…」
赤ちゃんを望む中でそういった思わぬ悲しみに出合うことがあります。
流産は、待望の妊娠が叶ってトンネルを抜けて世界が変わったような感じを味わっている時に
不意に知らされます。
聞いたときは「まさか」と思いますし、悲しみもとても大きいですよね。
1回の妊娠に対する流産率は38%と言われています。
この数字をどんなふうに思いますか?
100件の妊娠のうち、流産にならないのが62件ということですよね…。
初めてこの確率を知ったとき、私は「こんなに多いんだなあ…」と思いました。
当院のホームページに、“卒業された方の声”というページがあります。
当院で妊娠されたみなさんが卒業される日に一言頂戴しているものなのですが、
その中に流産の経験に触れておられる方が何人かいらっしゃいます。
もちろんそのことに触れておられない方もいらっしゃいますので
実際はもっとたくさんおられることになります。
流産の経験を友達から聞くことって、あまり多くありませんよね。
その後、新たな命を生み出されてから「実はこの子の前に流産してるねん」
と言われることは、まだあるかもしれませんが…。
周りから流産した話を聞くことはあまりないので
「なんで自分だけ…」とどうしても思いがちになりますよね。
けれど、周りには、「なんで自分だけ…」と流産のことを言わずに
同じようにご自身の中で悲しんでおられる方がいらっしゃいます。
そして、流産のあとはもう一度妊娠していくことを怖く感じる方が多いです。
2回流産を繰り返された場合は特にそう感じられているように思います。
どうしても「もし、また流産したら…」と考えますよね。
あのつらさはもう身に起こってほしくないですもの。
卒業された方も、そういった気持ちを抱えつつ、
それでも無事の出産を望んで通院を続けておられたのだと思います。
流産後の妊娠に、カウンセリングが有効だといわれています。
流産の体験を誰かに話すことはとてもエネルギーのいることだと思いますので
なかなか受けにくいところがあるかもしれません。
「話すと泣いてしまうから受けない」と思うこともありますよね。
当院でのカウンセリングは、
特に“不安”や“悩み”に限った話をする場所というわけではありません。
次の妊娠まで、
この先どうしていくか答えが出るときまで、
または、今よりも主体的に生きられるように、
ただ“自分のことを話せて状況を知らせることができて一緒に考えたりできる場所”と
思っていただけたら、と思っています。