臨床心理士の学会に行ってきました。
臨床心理士は、精神科や心療内科はもちろん、緩和ケアや周産期医療、一般企業、
学生相談室、スクールカウンセラー、子どもの発達相談、矯正施設、児童施設、
老人介護施設、カウンセリング機関などなど、いろんな現場で働いています。
それぞれが、心理療法の場で、どんな出会いがあってどんな関わりをしていって
どんなふうなプロセスを歩んでいったか、ということを共に省りみたり、
研究結果を報告したりする場となっています。
発表を聴いていて、ものすごく当たり前ですがものすごく大事なことを改めて思いました。
ちょっと変なことを言いますが、「そっか、魔法って使えないんだな。」ってことです。
「魔法って使えないんだ」というより「現実の世界でできることでやっていくしかないんだ」ですかね。
臨床心理士と会うことになったときって、
多くの場合“困ったことや悲しいことなど、何か相談したいことがあったとき”なんですよね。
そして、“どうしたら解決するのかわからないこと”であったり、
“もう取り戻せないこと”であったりするわけです。
「どうしたらよくなりますか?」「どうしたら解決しますか?」
そういった難しい問いを持って来られます。
けれど、臨床心理士も、そういった悩みや疑問を解決する答えを知っているわけではありません。
例えば、「どうしたら私は妊娠しますか?」、「どうして私は妊娠しないんですか?」という問いに
「こうしたら妊娠しますよ」、「こういう理由で妊娠しませんよ」といった答えは、
残念ながら持っていません。
というか、そういった答えは存在しないんだなあ、と思いました。
もちろん、医学的に「こういうところが影響していそうだからこれを治しましょう」といったことは、
医師からお伝えできることもあるかと思います。
ただ、「どうして私は妊娠しないのだろう」という「どうして私は~なのか」という問いへの
問いの持ち主が納得されるような決まった答えというのはありません。
臨床心理士は、その人が、その問いとどのようにつきあっていかれるのか、
心と現実との間の折り合いをつけていかれるのか、というところを、
一緒に話したりする中でその方のペースでしっくりくるかたちになっていくまで、共に過ごしていきます。
そういったプロセスで問いへの答えを一緒に探していくのですが、
その答えは問いへの直接的な答えじゃないかもしれないということも含めて、
“その人の答えのかたち”を一緒に探していくことが、
臨床心理士の関わり方の一つなんだなあと思いました。
そんなようなことをされている発表をたくさん聴いてよい刺激を受けて帰ってきました。
人生いろんなことがありますし、思い通りにならないこともあります。
どんな状況であっても、心に対して真摯でありたいと思っています。