よく買いに行っているケーキ屋さんで
店長を任されていた方が、
独立してご自分のお店を出されるため、
10年修業されていたそのお店を卒業されました。
卒業される日にもケーキを買いに行ったのですが、
その彼女と一緒に長年働いていたスタッフさんが
「さみしいです」と気持ちを口にされると、
オーナーさんはそのスタッフさんに、
「みんなね、去っていくんだよ。
あなたも、いつか去っていくんだよ。」
と、やさしく仰ってました。
自分の勤め先以外で
誰かの退職に立ち会う機会はあまりないので、
ちょっと不思議な感覚ではあったのですが、
私もあたたかいような淋しいような特別な気持ちになりました。
そんなことがあって、
「そうだよね、ものごとって必ず終わりがあるよね」
という当たり前のことを
ぼんやり考えていました。
例えば、毎日会社に出勤するときなんかに、
「この生活、いつまで続くのだろう…」
と、途方に暮れたりすることもあると思うのですが、
必ずどこかで終わりが来るのですよね。
自分で終わりにすることができることもあるし、
終わりになるまでそのままでいることもあるかと思います。
そういえば、
もう10数年前に「すいか」というドラマがあったのですが、
登場人物の女子学生が、
アイスの当たりを4回か5回連続で当てて、
やっとはずれたときに、
彼女がすごくホッとするシーンがあったのですよね。
(アイスが当たるのって嬉しいことのように思いますが、
当たりすぎると大変そうでした。)
彼女にとっては
「やっと終わったあ」という解放感があって、
「終わるのも楽しいかも」と思う場面として
描かれていました。
「終わる」には、
悲しいや淋しいや残念だけでなく、
解放感やこれまでの労いや、
これからのはじまりがあるのだなあ、と思います。
「この生活を絶対続けないと!」
という張り詰めた状態よりは
「いつか終わるんだよね」
「いつ終えてもいいんだよね」
と考えておくと、
心に余地が生まれることもあるかもしれませんね。
追記:街のあちこちから、金木犀の香りがしています。
臨床心理士 間塚