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新しい年度が始まりましたね。
みなさんは、生活に何か変化がありましたか?
さて、お気づきの方もおられると思いますが、
草津レディースクリニックでは
ある変化がありました。
長い間働いてこられて
スタッフにとっても頼れる存在であった看護師長が
3月で退職されました。
きっと、通院されているみなさんも
その看護師さんを頼りにされていたことと思います。
また、今後通院の再開を予定をされている方で
その看護師さんに会えることを
楽しみにしていた方もおられると思います。
…さみしいですよね。
私たちスタッフも
まだその方の不在が
実感しきれていないような
少しふわふわした感じがあります。
一方で、その方が残してくれたことを胸に、
今のメンバ―、これからのメンバーで、
みなさんの妊娠をめぐる今をサポートできたら…
と、引き締めすぎない程度に
気持ちを引き締めております。
いろいろな人や体験と
別れたり出会ったりを重ねて、
いろいろな刺激と
試行錯誤したり向き合ったり受け容れたりしながら、
“わたし”ができていくんだなあ、
と、改めて思いながら…。
病院というところには
できることなら
行きたくないものですよね。
行かずに済むなら
それに越したことはないのかもしれません。
けれど、行かざるを得ない状況に
なってしまうこともあります。
行かずに済むなら
それに越したことはないかも…というのを大前提として、
誤解を恐れずに言うと
病院に来るという体験が
ぜんぶマイナスかというと
そうでもないものかもしれません。
望んだ結果が得られる可能性があることはもちろんですが、
病院に来ることで
出会う世界もあると思うんですよね。
医師やスタッフと出会いはもちろん
妊娠をめぐって、ご自身のこころや価値観が
広まったり深まったり大きく変わったりといった
新たな自分との出会いもあるかもしれません。
草津レディースクリニックでの出会いが
みなさんが豊かさを感じるものでありますように…。
私たちスタッフは、
今日も草津レディースクリニックで
お待ちしております。
公認心理師・臨床心理士 間塚
前回、私の外反母趾のことを書きました。
小さいころから骨が出ていて
うずいたりもするので、
母趾をかばうような歩き方をしています。
だから、体重のかけ方とか、足の使い方とかが
偏っているんだろうなあ…
と、気になっていたんです。
そこで、私はダンサー経験と大学院での研究をもとに
足のトレーニングを開発された方のレッスンを
受けにいくことにしました。
集団でのレッスンだったのですが、
先生が一人ひとり回って教えてくれる時間がありました。
そのとき、先生に、外反母趾のことを気にしていると言うと、
「外反母趾は、もともと裏にある骨が横に来ちゃったんだから
『こっちだよ~』って、正しい位置に戻してあげたらいいのよ」
と言いながら、私の母趾を足裏の方に押しました。
母趾を押したら痛いと思っていたので
「え?待って、先生!痛い!」
と言ったのですが、
「最初は痛いかもしれないけど、
『こっち!』『こっち!』って、教えてあげて~」
と、しばらく母趾を正しい位置に押し続けました。
すると、意外にも、痛かったのは最初だけでした。
そして、先生は足を両手で包んで、
かすかな振動が伝わる程度に動かしつつ
やさしく触れてくれました。
そうすると、私の足の感覚が変わりました。
足の骨の存在が、ありありと感じられるようになりました。
私は、自分の足を少し愛おしく思いました。
足を愛おしく思うなんて
記憶の中では初めてのことでした。
私は、“生まれたときから外反母趾になると決まっていた足”
だと思っていたのですが、
先生は「生まれつき外反母趾なんてことはないよ」と仰いました。
「骨は成長していくのだから、
生きていく過程で変わっていくんだよ」
と、仰いました。
私は、生まれつきだと思っていたので、
先生のその指摘に少し動揺はしましたが、
わりとすぐ「そうか」と受け止めることができました。
先生としては、
成長過程によって骨の流れも変わるということ、
そして、トレーニングで外反母趾が治ることはなくても
足の使い方や足の感覚はトレーニングで鍛えられるので
身体能力も高めていくことができるということを、
伝えたかったのだろうと推測できたからです。
もし、私のこころが閉じたままの状態だったり、
相手に信頼感が芽生えていないまま、
「生まれつきっていうけど、生まれつき外反母趾の人なんていませんよ」
と言われたら、私はこころのシャッターを下ろしたかもしれません。
「え?小さい頃から骨は出ていたんですよ?
そのことを知らないからそんなこと言うんじゃない?」
って、思っていたと思うんです。
けれど、その先生とは、
それまでのやりとりで信頼できる気持ちが芽生えていたので、
そう言われても「そうか」と受け止められたんですよね。
相手が言っている内容は同じであっても、
信頼できる感じがあるのかどうか
こちらに受け止めるゆとりがあるかどうかで、
受け止められることもあれば
拒否してしまうこともありますよね。
みなさんにも、そういった経験はありませんか。
当院でみなさんとスタッフが紡ぎだす関係は、
みなさんのこころもオープンでいられて
みなさんとの間に信頼感が生まれる関係に
なっているといいなあと願っています。
そういった関係になれるように、
スタッフ一人ひとりが意識していきます。
よろしくお願いいたします。
公認心理師・臨床心理士 間塚
突然ですが、私は外反母趾です。
しかも、だいぶキツめで、
診てもらったところ
手術するしか手はなかったのですが、
手術をすると、しばらく動けなくなってしまうので
ずっとそのままにしています。
「ヒールとか履いていたからなったんじゃない?」
と、言われることがよくあるんですが、
幼い頃からすでに出ていて、
ヒールなんて先の細い靴は、
そもそも履けなかったんです。
(ところで、「ヒール履いてたからじゃない?」
って、わざわざ言う必要あるんだろうかと、
言われる度に思ってしまう私です。。。)
3年くらい前ですが、
フットマッサージを受けにいきました。
個人でされているサロンで
50歳半ばくらいの小柄な女性がセラピストで、
最初はどちらかというと好感をもっていました。
ところが、幼い頃から外反母趾だったと説明したのに、
そのセラピストさんは私の外反母趾をみて、
「親に背いている人は、親指が曲がるのよ」
と仰いました。
その瞬間、私はこころのシャッターを下ろしました。
言ってしまえば、“カチン”ときたわけです。
まあ、親に背いてないとは言いませんけども。笑
幼い頃から外反母趾で
履ける靴が少なかったり
時折うずいたりするわけですが、
そういったことを
「あなたのせいですよ」
と言われたような気分になってしまいました。
ちなみに、セラピストさんの施術自体は、
とても丁寧で、ここちよかったです。
施術はものすごくいいので、もう一度行ってみたんですが、
やっぱりそのことが引っかかってしまって…
私は、行くのをやめました。
もし、セラピストさんが
親と外反母趾とを結びつけて話したときに
私の反応がよくないことに気づいて、
「あ、なにか、ひっかかりました?」などと
聞いてくださったら、
そのときの思いを共有できて
関係も改善されたかもしれません。
相手がそのようにしてくれたら楽なんですが、
私の方も、言われたことに違和感があったりしたときに
こちらから「骨の出方に親との関係が影響するのですか?」とか、
「私のせいっていうふうに言われているように聞こえます」
と、感じているニュアンスが伝わるように
伝えられたらよかったなあ、
と、思ったりしました。
なんでこんなことを書いたかというと、
病院に行かなくなる理由と似ているんじゃないかな、
と思ったからです。
他院から来られる方とお話していると、
かかっていた病院での出来事を
教えてくださるのですが、
不満だったことについて
伝えておられていないことがほとんどの印象です。
もちろん、診てもらっている先生やスタッフに
本当のことは言いにくいという気持ちもあるかもしれませんが、
伝えることで変わることもあるんじゃないかな
と、思うこともあります。
(私も、セラピストさんに言えなかったんですけど…)
なので、当院に通院されていて
なんだか引っかかっていることや
ご不満に感じられることがあれば、
教えていただけると
ありがたいと思っています。
みなさんと風通しのよい関係でいられる
そんなクリニックでありたいと思っています。
公認心理師・臨床心理士 間塚
流産や死産など、お産をとりまく赤ちゃんの喪失は、
ペリネイタルロスと言われています、
流産は、1回の妊娠につき平均15%の確率で起こります。
そして、年齢とともに増えていき、
40歳で約35%、42歳では40%を超えてしまいます。
また死産率は19.7%です。(出産+死産に対しての死産の割合です)
*妊娠12w以降の死亡を死産とした場合
数字でみても
通っておられる方の妊娠歴からも、
流産や死産はめずらしいことではありませんし、
また、一度だけでなく
何度か経験される方も少なくないんです。
ただ、めずらしいことではないのですが、
めずらしくないから大丈夫ということではありませんよね。
こういうことがあって、
こころやからだが
いつもとは違う調子になったりしていませんか。
ところで、
仕事をされているみなさんは、
こういったことがあったとき
おやすみは取られていますか?
妊娠12w以降に赤ちゃんとさよならした場合は、
労働基準法で原則8週間の産後休暇を取るように
義務付けられているんです。
12wまでにさよならした場合も、
制度化はされていないかもしれませんが
おやすみしてもらえたらいいなあ…と思います。
もちろん、家にずっといても考え込んでしまうから
休まず働いていつも通りに過ごしたい!
という気持ちがある方もおられると思います。
こころとからだに大きく無理がないようなら
出勤して気が紛れる時間を過ごすのもいいですよね。
無理に仕事に行かれていたり
休みたいけど休みたいと言えない場合だと
ちょっと心配です。
いくら制度があったとしても、
いくら周りの人が休むようにすすめても、
職場の人員が足りていなかったり
休んだら誰かに迷惑がかかるように思ったり、
上司や同僚に知られたくなかったり
上司が理解がなさそうだなあ…と予想してしまうと、
なかなか休みたいとは言えない人が多いんじゃないでしょうか。
そんな気がかりがあると
休みを申請することがストレスになってしまいますよね。
また、仕事の状況や立場的に
お休みすることが難しい方もおられます。
…でも…必要なときは、休んでください、ね。
生きていたら
頑張らなくていいときと
頑張りどきっていうのがあります。
頑張らなくていいときは
自分のこころとからだを最優先にするのがいいと思います。
無理はしないほうがよさそうなタイミングって
生きていたら誰にでもあるものです。
赤ちゃんへの想いを
めいっぱい赤ちゃんに伝えたり
お二人でシェアしたりして、
自分のこころに添って
少しずつ受け止めていけるように
お時間をとってください。
それと、妊娠の途中でさよならになったことを
同じような経験をした人たちと話したかったり、
同じような経験をした人たちの話を聞きたい方がおられると思います。
ネットで検索したらたくさん出てくると思いますが
経験者さんたちのコミュニティのリンク先を載せておきますね。
無理に気持ちを切り替えたりしないで
自分のこころとからだのためになりそうなことを
たくさんしてくださいね。
公認心理師・臨床心理士 間塚
妊娠のために治療を受ける人は増えていますし、
社会的にも理解がすすんでいると思います。
その一方で、今も、治療をしている人に
負担になっているようなことがいくつかあります。
例えば、知人の妊娠や出産の知らせや、
通院するための仕事の業務調整、
そして…親からの「 孫 “口”撃」です。
親と話していて、
「早く産みや」とか
「子どものことは考えてるんか?」などと
会話に挟み込まれると
心臓がドキッとしませんか?
親から妊娠のことを言われると、
ほとんどみなさんプレッシャーを感じたり
親に対して申し訳なく思うと、おうかがいします。
ところで、そう言われて、
「そういうことは言わないでほしい」とか
自分の気持ちや思いを伝える人はどれくらいいるのでしょう?
そうやって伝えている人って
そんなに多くない印象があるんですが、
私、実は、
「怒らないのはどうしてなんだろう?」
と、思っているんです。
そもそも、子どもを産むことが前提なことに違和感があります。
子どもを持とうとするのかどうかも含めて、
親とは他者の“わたし”が、
そのまた他者のパートナーと一緒に
決めることだと思うんです。
他者たちの自己決定権に
他者である親が踏み込んでいいのでしょうか。
他者の人生に、
自分の理想や価値観を押し付けてはいけないと
私は思っています。
親子であっても、他者なのですから。
私がみなさんからおうかがいした印象では
“ 親が孫を楽しみにしているのは当然 ”だと思うし
“ 私だって、孫の顔を見せてあげたいと思う ”けど、
“ 面と向かって言われるとプレッシャーになる ”
というふうに思っておられるように受け止めています。
私は、もし孫を見てみたい気持ちがあっても、
親は、その気持ちを伝えること自体を
控えるものではないかなあ、と思っています。
なぜかというと、
そういったことは場合によっては
他者に性行為を強要することにつながるかもしれませんし、
親のその願いは他者を使役させて叶うものだから
親の願いが先行してはいけないと思いますし、
言われた方がどんな気持ちになるのか
相手の立場になって考えたとは思えないからです。
自分が言ったことを子どもがそんなに気にかけるとは
想像されてないと思うんですよね。
親子だからって
なんだって言っていいわけではありませんよね。
親子関係って
とても難しいです。
子どもにとって親は大切な存在で
認められたい相手であることが多いですが、
そうであると同時に親の価値観や感情に
巻き込まれてしまいがちでもあります。
親との関係で
こころが押しつぶされそうになったり
言われたことが頭の中をぐるぐるするようなことがあったら、
すぐに伝えてほしいと思っています。
いろんな気持ちを飲み込んだり
頑張って立ち振るまわないようにして、
こころを守っていけるようにしていきましょう。
公認心理師・臨床心理士 間塚
みなさん、気功って、やったことあります?
気功はけっしてあやしいものではなく
中国古来から伝わる健康法なのですが、
私の学生時代の教授が
気功の研究もされてまして、
先月から3回、気功を習ってみました。
習った中に、五臓をいたわる気功があったのですが、
脾・肺・腎・肝・心、それぞれの臓器に
新鮮な気を送るんですけど、
「いつもありがとう」
「酷使しちゃってごめんね」
と、労わりの気持ちを伝えながら気を送るんですね。
そうやって臓器に気を送っていたら、
以前、また別の先生から瞑想を習ったときに、
「子宮や卵巣に感謝を伝えましょう」
というレクチャーがあったことを思い出しました。
自分の臓器を労わるような時間を
毎日の暮らしの中で用意している方って、
気功とか瞑想とかヨガとか
そういったことを習慣にしている方くらいかもしれませんね。
みなさん、いかがですか?
こういうことって
続けていくことが大事なので、
1回だけで何か劇的なことが起こるのではないのですが、
「しっかりイメージすること」って
身体に一定の効果があると思うんですよ。
例えば、ちょっと想像してみてください。
夕方、田舎の道を歩いていたら、
後ろから、物音がします。
“ガサッ!ゴソッ!”
振り返ったら…
なんと、もう5mのところに、熊が!!
と、想像したときに、
「ドキッ」と心臓が鳴ったり、
汗が出たり、鼓動が高くなったりしませんか?
実際には何もなくても
イメージが強ければ
実際にそういった効果(影響)が身体に出るんですね。
「ありがとう」とか
「いつも一生懸命働いてくれているね」と、
ただそういう言葉を言うだけじゃなくて
実感のレベルで想いを送っていったり、
本当に新鮮な気を送っていると強くイメージしながらやっていると、
からだがその想いと響き合っていくことも
あるように思います。
子宮や卵巣も、他の臓器も、
ずっとそのときの精一杯で、
働いてくれているんですよね。
できたら毎日、
ちょっとの時間でもいいので、
じっくり自分のからだの臓器に
手をかざしたり
ほほえみかけたりして、
労わっていけるといいですね。
緊張していたり
一生懸命だったりした臓器も、
少しゆるんだり
気が通って元気になったりして、
本来の力をより発揮できるようになるかもしれません。
公認心理師・臨床心理士 間塚
体外受精で授かられる方は年々増えていまして
2020年のデータでは、13.9人に1人は体外受精で生まれた子なのだそうです。
草津レディースクリニックが開院する1年前の2008年は
50.3人に1人の割合だったことを思うと、
授かる選択肢の一つとして
以前よりも格段と選ぶ方が増えたことがわかります。
このデータは体外受精が保険診療になる前のことなので
保険診療以降はもっと割合が高くなるんでしょうね。
私たちスタッフは
体外受精を特別なものだと思っていませんし、
体外受精をしないといけないはっきりとした原因がなくても、
「人工授精3回くらいやって授からなかったら体外受精すすめてますよ~」
と、“ あたりまえに ” 伝えているかもしれません。
でも、みなさんにとっては、
体外受精をすすめられたときは
いろんな気持ちがわくのではないでしょうか。
「妊娠に近づくから頑張ろう」というような前向きな気持ちもあるでしょうし、
「ついに体外受精か…。」と、一応想定はしていたけれど
いざすすむとなるとちょっと胸がつっかえるような感じがしたり、
「本当に、私って体外受精しないと授からないのかな?」と、
自分に対しての自信が揺らいでいる感じがしたり
治療の流れに沿えない気持ちがあったりすることもあると思うんですよ。
初めは、何か妊娠しにくい要因があるのか調べようって感じで来られて、
タイミング合わせていたら授かるのかなあって思っていたけど
半年くらい経ったら人工授精をすすめられて…、
人工授精にすすむときだって
残念な気持ちになる人もおられるし
妊娠に近づくわくわくを感じる人もおられます。
ともかく、いろいろ思うことはありながらも
人工授精にすすんでみて、
やっぱりちょっと期待したりして、
それでも授からないことが数回続いて…
そして、体外受精と言われて…というプロセスで、
この間に周りの人の妊娠や出産があることも多いですし、
結果的に体外受精をすることに決めても
さまざまな想いを引き連れておられることと思います。
「夫婦生活で授かりたかったなあ…」
という想いが残っている人もおられるでしょう。
今のところ、
夫婦生活で授かったお子さんと
体外受精で授かったお子さんでは、
小学校就学前の知的能力や運動能力に
大きな差はないようです。
「他の友達は、こんなに時間かけずに、
すぐ授かったのに、私たちだけどうして…」
「周りの人は、お金使わずに子どもできたのに、
私たちはこんなにお金使わないといけないなんて…」
「お姉ちゃんも妹も、タイミングまでで授かったのに、
なんで私だけ、まだできないんだろう…」
など、もやもやすることってあると思うんですよね。
自分だけ、苦労しているみたいで、
なんだかみんなと違うみたいで
不公平な気分を感じたりしちゃうことがありますよね。
こんなふうに
子どもがほしいという願いに近づくために
通院中は、要所要所で選択をしていくことになります。
選択をめぐって、思っていることや気持ちをシェアしていただきながら、
みなさんそれぞれが最良の選択ができるように
お手伝いしていきたいと思っています。
また、折をみて、状況を伝えにいらしてくださいね。
公認心理師・臨床心理士 間塚
2月5日、東京の永田町で開催された
生殖心理学会の学術集会に参加してきました。
生殖心理学会とは、
生殖医療におけるこころのケアの学術的向上と
生殖医療の発展のための学会です。
今年のテーマは、ゲノムでした。
遺伝医療は生殖医療と密接に関係しています。
例えば、ご自身やご家族に何か遺伝性のご病気や特徴をお持ちの場合、
「お子さんも同じような病気や特徴を持って生まれるのでは…」
と、心配になる方もおられます。
また、流産を繰り返されたカップルや
精子が見当たらなかった方は、
ご自身の染色体に変異がないか
検査される方もおられます。
そして、もう流産を経験したくない方や
早く妊娠したい方、
お二人の染色体に変異があった方は、
着床前検査を実施して
染色体異常がない受精卵を移植するということができます。
(妊娠率は100%ではありませんし、流産率も0%ではありません)
また、妊娠後、心配なようでしたら、
系列の南草津野村病院でNIPTを実施しております。
このように、妊娠、出産を巡って、
遺伝子にかかわる選択をしていくことが、
とても身近になってきています。
学会に参加して思ったことは、
どういった局面であっても
最終的にはお二人で答えを出していくことになるのですが、
答えを出していかれるまで
(そして、答えを出されたあとも)
周りからのサポートが必要だということです。
当事者さんたちの講演もあったのですが、
答えを出していくプロセスに
関わってくれる専門的な人(主にカウンセラー)と、
同じような立場の人同士の支え合いが必要と仰っていました。
結局は答えを二人で出すのだけど、
他の人はどんな選択をしているのか、
たくさんの可能性を知ることで
視野が開けたり、自信をもって選択できることがあります。
また、混乱している中で、
客観的な立場から、状況を一緒に整理していってくれる人、
相手が個人の価値観や倫理観を入れずに相談にのってくれる人がいると、
迷いや心配、動揺などのこころを抱えながらも
なんとか先に進んでいくのに役に立ちます。
医療技術が進歩することで
もしかしたら体験していたかもしれない悲しみや苦しさを
スキップすることが可能になった一方で、
「人生でこういう選択をすることになろうとは…」
という側面も出てきます。
迷ったり、困ったり、混乱したりするときに
ひとりで(カップルで)考えると、
なんだか自分たちだけが
このようなことに直面しているみたいで、
心もとなくなるかもしれません。
どうか、そのままの気持ちを
クリニックに、カウンセリングルームにもってきて、
取り繕わずに教えていただきたいと思っています。
どんなことを考えたり思っておられるのか、
どんな状態になっておられるのか、
私たちは知りたいと思っています。
そして、直面されていることに
どんな答えを出していかれるのか、
お一人で(お二人だけで)考えるようにお伝えするのではなく、
一緒に考えていきたいと思っています。
公認心理師・臨床心理士 間塚
ライブができるスペースを
13年間運営していた友人がいまして、
そのスペースが立ち退きになったので
今月で閉まることになったんですね。
なので、先月あたりから、
こちらでライブをしていたみなさんから
その友人との出会いや想い出、
友人への感謝が伝えられる機会が続いているようで、
「なんだか生前祭みたい」
と、言っていました。
こういった機会がないと
どんなふうに思っていたのかとか
聞くことがないから
おもしろいみたいです。
確かに、慣れ親しんだ関係では、
改めて想いを伝えることって
しなくなりがちですよね。
(大事なことなのに、どうしてでしょう?)
また、友人は、
スペースから物がなくなっていく様子を見ながら
「やめるって好きなんだよね」
とも言っていました。
「やめるって好きなんだよね」と言われたときに
私も今やっていることをやめる想像したのですが、
確かに、胸からお腹にかけて
すごくスッキリするような感じがありました。笑
何かを続けていくということは
それだけ大変なことでもあるのですね。
友人は自分で「やめる」ことを決めたわけではなく
不可抗力でやめざるを得なくなったのですが、
その結果から生まれる新しい部分を
楽しみにしているのだと思います。
もちろん、残念に思う部分も、
さみしい気持ちも心苦しい気持ちもあるのでしょうけれど…。
そういえば、その友人は
自分にやってきた流れをおもしろがれる人なんですよね。
ところで、通院については、
パートナーに治療意思がなくなったり
経済的に治療費が出せなくなったり
通院時間が確保できなかったり
何か別の病気やケガに見舞われたりといった場合は、
ご自分の意思とは違うところで
通院をやめざるを得なくなるかもしれません。
何度も何度も治療を繰り返しても
結果が出ない場合は、
治療を続けるかどうか
ご自分で決断をしていくことになりますよね。
こういった決断を
自分でするのは
とても勇気がいりますし、
「治療を続けたいというより
やめる決断ができないから通院しているんです」
という境地に立つこともあると思うんです。
何かの目標に向かって頑張っていて
その目標が叶わなかった人生になるのは
なかなか引き受けがたいことかもしれませんよね。
ただ、やめる前はこわかった未来も
やめた後、時間が経っていくと
そうでもないように思えるかもしれません。
やめたからこそ、自分に訪れるものや
人生の流れが変わることがあるからです。
ご自分のお子さんを持ちたいという願いが叶うことは
もちろんうれしく、素敵なことでしょう。
そして、そうでない人生であっても、
人生はきっと輝くのだと思います。
*************
さて、ここで、情報を一つ、提供させていただきます。
“telling,”という子供を育てたいと願う人へ
特別養子縁組制度の情報を発信しているサイトがあります。
今週2月4日に、特別養子縁組制度の
オンラインシンポジウムがあります。(無料です)
詳しくはこちらのページをご覧ください。→オンラインシンポジウム
特別養子縁組でお子さんと家族になられた方は
当院に通われていた方にもおられるんですよ。
いろんな家族のかたちがあって
いろんな幸せがあるんですね。
公認心理師・臨床心理士 間塚