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2022.07.19

休んでいいんですよね、きっと。

 

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この写真は

知人が撮影した

ドイツの農村風景です。

 

ドイツでは、

風邪の症状があって病院に行っても、

大したことではない場合は

受診しなくても手に入るような薬しか出されずに、

「とりあえず休んで自分で治すように」

って言われるんですって。

 

だから、ハーブティや薬草酒を飲んだり

その体調をよくする食べ物を食べたり

薬局に相談しに行ったりして、

外出せずに療養するそうです。

 

それでも治らないようだったら

受診して西洋の薬を処方してもらうんですって。

「できるだけ自分で免疫力を上げて治しましょう」

という考え方のようで、

「薬を飲んで早く治さなきゃ!」という意識はなさそうです。

 

「早く治そうとしないんだったら、仕事はどうなっているのかな?」

と思ったのですが、

「風邪気味かなあ」というときや

「体調崩しかけているなあ」というとき、

ドイツでは、最初の3日間は医師の診断書なしで

病気休暇をとれるようです。

 

4日目以降は医師の診断書がいりますが、

体調不良の内容や病名については

プライバシーの保護から

会社側に伝えられることはありません。

上司の人が「どうして休むの?」

と聞いてしまうと、パワハラになります。

 

いいですよね。

日本みたいにいちいち

“ 生理休暇 ”とか“ 不妊治療休暇 ”とか

名前をつけてしまうと、

なかなか申請しずらいところがありますけども、

(申請しずらいのは、日本人の心性かもですが…)

理由が生理であっても

不妊治療であっても

精神的なことによるものであっても

一括して “病気休暇” なんです。

しかも、この病気休暇、有給休暇にカウントされないんですよ!!

そして、なんと!病気休暇は年間最長6週間とれて、給料全額保証なんです!!

 

この制度を知って

本当にいいなあ、と思いました。

日本も有休消化の義務化とかっていう

ちょっとしたところを推進するんじゃなくて、

抜本的に制度化してほしいですよねえ。

 

風邪気味やちょっとした不調で

仕事を休む選択をとれる人って

日本ではまだ多くないように思うのですが、

みなさんはいかがでしょうか?

 

体調にも影響する

精神的な不調や自律神経系の不調は、

一時的な風邪の症状とは違って

少し長くなることがありますし、

実はたくさんの人がそういった症状とつきあいながら

社会生活を送っていると思うんです。

 

ちょっと動悸が起こっただけでは

ちょっと下痢が続いただけでは

ちょっとめまいがしただけでは

自分のために休むことはできなくて、

いよいよ社会生活に差し支えが出たり

もう家から出られる状態じゃなくなって、

やっと休職になる場合が多いと思うんです。

 

もちろん経済的なこととか

経営上のこととか

謎の根性論とか

いろいろ都合があって

この休みにくい風潮ができたのでしょうが、

雇用されている私たち側にも

「ちょっとしたことで休んじゃいけない」

「少し辛くても頑張らなきゃいけない」

という精神論が備わってしまっているように思えるんですよね。

 

けれど、本当にそうなのですかね?

早い段階で、治してあげられた方が、

結果的に本人にも会社にも

いいと思うんですけど、

どうでしょうか?

 

なんで「ちょっとしたことで休んじゃいけない」

なんで「少し辛くても頑張らないといけない」

と思っているのかっていうと、

誰かが不機嫌になったり怒ったりするからだったり

体調が良くないのは自分のせいだと思っていたり

和を乱したらダメだと思っているじゃないかなと思うのですが、

そんなふうに思ったりしませんか?

 

社会がもっと個人を労っていく世の中に

なっていってほしいと願いますが、

自分で自分をつらい状態にもっていってしまわないように、

「この『こうじゃないといけない』という信念はどこから来たのかな?」

と、自分の中で思い込んでいることを

見つめ直していくことも必要なのではないかなあ

と、思っています。

 

 

 

公認心理師・臨床心理士  間塚

 

 

 

 

 


2022.07.11

ちゃんと、話を聴いてもらったら。

 

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蚊が出だした6月のある日の帰り道、

学生時代の先輩にバッタリ出会いました。

先輩も、臨床心理士として働いている方です。

本当にご無沙汰の偶然の出会いにお互い驚いていると

先輩は私に近況を尋ねてくださいました。

 

このとき、当たり障りなく

「元気にしてますよ」

「先輩はどうですか?」

と返事することもできたのでしょうが、

実はそのころ、私はちょっと元気がない時期で

“自分の中でいろいろ考える”

“自分の中でいろいろ対策を練ってみる”

ということを繰り返していたときだったのです。

 

そこで、私は、先輩に状況や考えていることを伝えました。

誰かにちゃんとわかってほしかったのかもしれませんし、

なんとかして状況を変えなければ!と思っていたのかもしれません。

 

臨床心理士って、雑談の場では

臨床心理士として話を聴くわけではないので、

先輩は先輩として話を聴いてくださっていて、

そして、話していたのは15分くらいなのですが、

それでも「聴いてもらった!」という実感がありました。

 

実はそれまでも何人かの人たちに、このことを話したことがあって、

それで、その方々に話したときと

先輩に聴いてもらったときと何が違ったのかな?

と、振り返ってみたのですが…

 

先輩の場合

・他に作業をしながらではなく、

 私の話を聴くことに集中してもらえる状況だった

・先輩に「他人の話を聴く」ことが身についていて

 「聴く」ことに重点を置いてくださっていた

・「私、思ったように話していても大丈夫なんだ!」と先輩の姿勢から思うことができた

 

他の方々の場合

・相手は「何かをしながら」聴いていた

・相手のよく似た体験談を教えてくれた、励ましてくれた

・相手が思う「答え」を伝えてくれた

・今の自分を「ダメ」と相手が思っているように感じる発言があった

・自分が話したいことをあまり話せなかった

 

こんな違いがありました。

 

他の方々もみんないい人なんですよ。

私を心配もしてくれていたんです。

どちらかというと先輩との場合がちょっと特別なのであって、

基本的に雑談や日常の会話って

こういうものじゃないかな、

と、思っています。

 

雑談や日常の会話の場合の多くでは、

相手は自分のためを思って

一生懸命考えてくれた意見を伝えて

なんとか状況がよくなるようにとサポートしようとしてくれます。

相手は、自分の話から思い浮かんだ似たような体験について

「自分にもこういうことがあった」と

教えて、励ましてくれます。

相手が考えてくれた意見がなんだか自分にハマらずに

「ん~、それはそうなんだけど、でも…」

と、自分の意見を言おうとすると、

その先の意見をちゃんと聴いてくれることもあれば、

相手は不機嫌になっていくこともあります。

もし自分の話をメインで話したいのなら

「お願い、最後まで私の話を聴いて」

と、伝えないと難しいかもしれませんし、

もしかしたら、そう言っても

「え?いつもちゃんと聴いてるけど?」

と、意図が伝わらないこともあるかもしれません。

 

こういうことがあって

“自分のことを十分に聴いてもらう”

という体験は、

本当にかけがえのないものなんだな

と、改めて実感したのです。

 

さて、先輩に聴いてもらった感じがした日、

私は胸やお腹のあたりがスッキリしているのを

確かに感じました。

そして、少し自由さが増した感じがしました。

こころに?思考に?

余白ができた感じでした。

 

とはいえ、それだけで何か大きく変わったかというと、

その後のいろいろな積み重ねもあっての今だとは思うのですが、

そういう体験があったその日からの私と

もし先輩に会っていなかったその日からの私とは

また違った私だっただろうとも思っています。

 

 

 

 

公認心理師・臨床心理士  間塚

 

 

 

 


2022.06.28

流産とライフスタイル、安心感の大切さ。

 

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やっと妊娠判定が出て

喜びもひとしおな中、

流産になることが

残念ながらあります。

 

初めて経験されたときは

「まさか…」

「そんな…」

と、絶句するような感じかもしれませんね。

 

流産は、1回の妊娠につき15%の頻度で起こります。

そして、女性の年齢が上がるにつれてこの頻度は高くなるので、

40歳をすぎると40-50%の確率で流産に至るようです…。

35歳以上の女性の38%は

流産の経験があるということです。

この数字だけをみると

周りに流産されたという方があまりおられないかもしれませんが、

おられないというよりか

多くの方が流産の体験を話しておられないのだと思います。

 

無事出産できるように

何に気をつけて過ごせばいいか、

活動量や運動量、

アルコール、カフェインなど、

どれくらいが適量か

気にされている方もたくさんおられます。

 

体重は、流産だけでなく

妊娠合併症にもつながりますので、

標準圏内でいてくださるのがいいですね。

 

喫煙やアルコール摂取は

子どもが生まれてくる確率を下げるそうです。

 

カフェインは一日300mg以上を摂ると

流産が増加するという報告があるようですが、

それを否定している報告もあるそうです。

ところで、カフェインというと

コーヒーを思い浮かべがちなように思うのですが

カフェインは、エナジードリンク、お茶や紅茶、

チョコレートにも含まれていますよ。

 

そして、運動ですが、

「あまり動くと流産になるんじゃ…」と思う方や

「前に流産したとき、仕事が忙しくてバタバタしてたんですよ」と

流産との関連を心配される方がわりとおられるのですが、

運動が流産につながるというエビデンスはないそうですよ。

 

というのも、

初期流産は妊娠10W程度までに起こる流産なのですが、

原因の大部分(80%)が受精卵の染色体異常なのです。

その他、器質的な部分で、

流産につながりやすい体質である場合と、

カップルどちらかに染色体異常が認められる場合があります。

 

流産になった方が

「あのとき、ああしていなければ…」

と後悔されることはどうしてもあるのですが、

多くの場合は

この受精卵は、染色体に異常があって出産には至らないと、

最初から決まっていたということになるんです。

 

ところで、流産を経験した方が

次の妊娠から出産に至られるときに

精神的なケアが有効だとエビデンスで出ています。

(カウンセリングの効果が実証されています)

 

出産希望の女性が

“やさしく、愛情をもって、労わられている”

というような実感がもてるといいそうですよ。

自分にやさしくしてくれる人や安心できる人、

あたたかい気持ちになれる人と

一緒にいたり、お話して、

自分がいい状態でいられる機会をつくってみませんか。

周りの人に、あたたかく、やさしくしてもらって、

自分自身も、自分にやさしくして、

不安な気持ちはぬぐい切れないですが

おだやかな気持ちも感じながら

過ごしていきましょう。

 

参考:「不育症管理に関する提言」改訂委員会 「不育症管理に関する提言2021」

    兵庫医科大学産科婦人科 福井淳史「不育症の診断と治療」

 

 

臨床心理士  間塚

 

 

 

 


2022.06.21

気持ちに蓋をしない恩恵

梅雨に入ると身体が重たく感じますが、

毎年、きれいな紫陽花を見られることは、うれしいです。

 

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きょうだいや友達が

妊娠、出産していると、

妊娠の経験がなかったり

子どもがいなかったりすることに

こころがざわつく人は多いです。

ご自分と同じように

妊娠、出産に向かって取り組んでいる人と話すと

安心する部分がありますよね。

けれど、その人との間でも、

これまでの経過や治療内容などで

比べることもあるみたいですね。

 

例えば、タイミング療法をしばらく続けていて

毎回生理がきてしまうと、

こころがつらくなったり、

不安を感じたりしてくる人が多いです。

けれど、自分のそういう気持ちに気づきながらも、

体外受精をしている人や

自分たちより長く治療をしている人を知っていると、

「まだ、そんなに長く治療しているわけじゃないし、

 何年もやっている人とか

 体外受精すすんでもなかなか妊娠しない人もいるから

 こんなんでつらいって言ったらダメですよね」

と思おうとする傾向があるように感じていますが、

いえいえ、つらいって言っていいじゃないですか。

 

つらい感じがするって

とても大切なサインなので、

今の自分が感じていることを

なかったことにしないで

気づいていることはとても大切だと私は思います。

それに、その感じをたよりに

次の手を考えたりできると思うんです。

 

例えば、

タイミング療法を続けていて

妊娠できるのか不安な気持ちが大きくなっているようであれば、

そのことを先生に相談して、

タイミング以外の方法も考えてみてもいいかもしれません。

 

夫婦生活のことで気がかりがある場合で

なんともお二人では風穴が開けられないっていうときは、

そのことをご相談くださってもいいかもしれません。

夫婦生活のことを他の誰かには話しにくいかもしれませんが、

話せたことですごく安心してくださったり

こころがゆるんでくださる方は、とても多い印象がありますよ。

 

また、私は家族や知人に状況を伝えた方がいいと

一概には思っていないですが、

自分の状況を話せたことでスッキリした!

こころが軽くなった!

とおっしゃる方もおられるので、

あなたが言ったほうが楽になれそうな相手には

お話してみるのも一つかもしれません。

 

いずれにせよ、自分の中につらい感じがあるから、

状況を自分にとってできるだけよくしていく工夫を

考えることにつながると思うのです。

だから、なかったことにしないで、

ご自分の中からの声に耳を貸してあげると

少し違った世界が開けてくるのではないでしょうか。

 

つらいとか

しんどいとか

不安とか

そういった感じって、

どちらかというと

あったらダメな気がしたり

自分がちょっと幸せでないように思えたりするものですよね。

けれど、

そういった感じは

あってしかり、だと思うんです。

まずは「そういう感じがあるな」

と気づくことからはじめませんか。

そして、その感じが、

あってもいいもので

今の自分に役に立つ感じであることを知っておくと、

少しゆとりができるかもしれませんね。

 

 

 

臨床心理士 間塚

 

 

 

 


2022.06.09

体外受精をめぐって、浮かびがちな思い

 

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最近じめっと暑い日が続くなあと思っていたら

6月になりましたね。

コロナでしばらく自粛されていたイベントやお祭りも、

今年は、通年通りに開催されるものが多そうですね。

私たちのいつもの夏に、また会えるでしょうか。

 

4月から保険診療が始まって、

みなさんにもこれまでと勝手が変わったことについて

対応していただく必要がありましたので、

少しバタバタされたかもしれませんね。

 

「それで、結局いくらで体外受精できるの?」

という質問を、何度かおうかがいしています。

 

採卵から移植まで1回行うと

10万~20万ぐらいになりそうですね。

1度にいくつか受精卵を凍結できたら、

1回目の移植で結果が出なかった場合

次周期は採卵はせずに

ストックしている卵を移植していきます。

すると、採卵にかかる料金はかかりませんので、

次周期は移植にかかる料金のみのお支払いになります。

 

自費診療で体外受精を行うと

個人や病院で差はありますが

50万くらいはかかるでしょうから、

保険診療は、料金面での負担は少なくなります。

 

「それだけ安く体外受精にすすめるのなら、やってみたい」

と、ステップアップを希望されたり

治療を再開される方をたくさんお見掛けします。

保険診療になったことで

自費診療のときは躊躇していた方が

ステップアップされるきっかけにはなっているようです。

 

ただ「保険診療でも10万超えるのかあ…」

と思う方もおられるでしょうね。

「治療せず授かった人たちは

 お金かけずに済んでるのに…」

という想いが湧く人もいます。

お金も時間もかけなかった人への

うらやましい気持ちや、

なかなか妊娠に至らないことを

ちょっと不運に感じちゃうのは、

保険診療でも自費診療でも

大きくは変わらないですよね。

 

そんな気持ちも引き連れつつ

「やっぱりやれることはやろう!」

「後悔しないようにしよう!」

「子どもを授かる可能性が高くなるのなら、がんばろう!」

と、みなさん取り組んでおられます。

 

いろいろ思うことはあるし、

「できたらこうだったらよかった」

という想いは絶えないと思いますが、

叶ったらうれしい願いのために

何を選択するべきか、

もしくは絶対に嫌なことを避けるために

何を選択するべきか、

みなさんそこを大事に

決めておられるように感じます。

 

テレビや本、ネットから伝わる

自分の気持ちを代弁してくれるような

同じような体験をしている人たちの声に救われたり、

妊娠のことを話したら

いろいろ配慮をしてくれる

職場の人や知り合いが有り難かったり、

治療の詳しい内容を知りたいときに

丁寧に説明してくれる

先生やスタッフを心強く思っていただいたり、

そして、

「子どもがいなくても、

 2人の暮らしが十分幸せなのも、ほんと ♡」

と思わせてくれる人と一緒にいられる人生をしみじみ感じたり、

ご自分に確実に注がれている温もりや幸運を

たくさん感じながらすすめていってくださいね。

 

 

 

臨床心理士  間塚

 

 

 

 


2022.05.23

後悔しない選択をする難しさ。

 

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NHKの “あさイチ” という番組があります。

5月16日(月)の放送は

「今こそ本音で語ろう 不妊治療・新制度」というテーマで

人工授精や体外受精・顕微授精、男性不妊の手術が

保険適用になったことの紹介に多くの時間が割かれました。 

そして、ゲストの安田美沙子さんの妊娠希望期間中のお話や、

不妊治療の末、治療を終えたカップルが

治療の経過と今の暮らしについて語ってくださる時間がありました。

 

また、19日(木)は、

着床前スクリーニングと出生前診断の特集がありました。

着床前スクリーニングは

まだ保険適用ではありませんが、

移植の不成功や流産を繰り返された方や

染色体に変異をお持ちのカップルに

当院でも受けていただくことができます。

移植の不成功や流産の原因の多くは

受精卵の染色体異常と言われています。

着床前スクリーニングでは

受精卵の染色体数の異常を調べることができますので、

染色体数の異常がない受精卵を移植して

妊娠、出産へ至っていただくことを目的として行っています。

ご興味、関心のおありの方は

診察室でご相談なさってくださいね。

 

妊娠に対するあらゆる選択は

基本的にカップルお二人で話し合って

答えを出していただいています。

不妊治療の病院としては

そのために必要な情報を提供して、

お二人に願うことといえば

「後悔しないように選択してください」

ということなのですね。

この「後悔しないようにしてください」は、

私自身も本当に大事だと思っているのですが、

この選択をすることが難しかったり

苦しかったりすこともあると思うんですよね。

 

例えばですけども

治療の経過が長くなってきて、

体外受精に進む話が出てきたときに、

多くの方にとっては

後悔しない選択は、体外受精に進むことになるようなのですが、

「体外受精って、治療の最後だから、

 これで妊娠しなかったら…と思うと、怖いんです」

という気持ちになると

教えてくださる方はすごく多いんです。

それに、採卵がどれくらい痛いのか、

仕事と調整できるのか、

といった現実的なところも不安だったりします。

後悔しない選択をするためには、

そういった不安も引き受けることになるのです。

 

最初、不妊治療の病院に行きたいと提案するときだって、

後悔しないために病院に行きたいのに

「自然に授かるの待とう」とか

「医者にセックスのタイミング決められたくない」とか

パートナーさんに言われると、

後悔しないために話したことだったのに

傷ついてしまうこともあるかもしれません。

 

二人で決めるということは

二人で結果を受け止めるということですが、

一人ひとり考え方も違えば

受け止め方も違ってくるでしょうし、

また、二人で決めることだから

余計に難しいということもあると思うんです。

 

あさイチでインタビューを受けておられたカップルも

二人の妊娠への向き合い方が合わないときがあって、

そのときには二人で受診して

病院で相談したことで、

向き合い方が変わったと仰っていました。

 

二人での話し合いがうまくいかないときは

第三者を頼って、

いつもの話し合いに違う風を吹かせてみることが

いい刺激になることもあると思います。

 

後悔しない選択をするために

自分に湧いてきた気持ちを

パートナーさん以外の人にも話しながら

進めていくことって

とても大切なことなんだと思います。

 

二人での話し合いが煮詰まったとき、

お互いの考えが合わないとき、

答えは出ているけど不安が残るとき、

パートナーには言えない気持ちがあるとき、など

いつでも話しに来てください。

湧いてくる気持ちと連れ添いながら

一緒に進めていきましょう。

 

 

 

臨床心理士 間塚

 

 

 

 

 


2022.05.12

保険適用の体外受精について

 

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不妊治療の保険適用が始まりまして、

過去に体外受精をしたけれど

しばらく通院されていなかった方や、

2人目を望んでいて

経済面から体外受精は考えていなかった方たちが、

体外受精を見据えて

通院を始められました。

 

やはり経済的な部分がネックになっていた方は

たくさんおられるようですね。

保険適用が励みになる部分は大きいと思います。

 

ところで、

保険適用の体外受精と

自費の体外受精では、

できることが異なるのですが、

そのことについてはご存知でしょうか。

 

保険適用の体外受精も

自費で行う体外受精も、

採卵して、受精を確認し、

胚へ成長したたまごを

子宮に移植するという過程は一緒です。

 

では、どこが違うのでしょうか。

 

体外受精では、

採卵するために、卵胞を育てていくのですが、

今までの自費の採卵では、ベストな採卵に向けて

ホルモンの検査や超音波エコーを必要なだけ実施することができました。

ところが、保険適用の体外受精には

ホルモン検査や超音波エコーに回数制限(基本的に3回まで)がありまして、

その回数内でしか確認をすることができません。

「じゃあ、制限回数を超える分は自費で診てもらえないの?」

と思う方がおられるかと思いますが、

 

保険診療と自費診療を

交互に行うことはできません。

そのため、

自然周期での採卵や移植など、

ホルモン状態や子宮・卵巣の様子を

細やかにチェックすることが望ましい場合は、

保険適用で治療をすると

ベストな採卵、移植が難しいかもしれません。

 

SEET法や内膜スクラッチ、

子宮内膜受容能検査や子宮内細菌叢検査は

保険適用にはなっていませんが、

これらは先進医療という位置づけで、

検査や処置にかかる費用のみ自費となりますが

保険適用の周期の中で実施することができるようになりました。

 

また、当院も着床前診断(PGT-AとPGT-SR)の認可施設になりまして、

繰り返す流産や移植の不成功を避けるために

着床前診断を希望される方がおられるのですが、

こちらは保険適用ではなく、

また先進医療としても認められていない現状ですので、

着床前診断をご希望の場合は、

保険適用で体外受精をすることはできません。

(今後、先進医療として認められていく可能性はありますが、

 はっきりとしたことは分からないのが現状です。)

 

このように、今まで自費で行っていたこと全てが

保険適用になったわけではありませんので、

今までと同じ治療を希望したくても

保険では全く同じようにはできないということが起こります。

 

けれど、保険適用での体外受精は、

費用の面ではとても助かる方も多いと思うのです。

今までの体外受精よりも出費が少なくて済みます。

それに、保険適用での体外受精にも回数制限があるのですが、

制限が移植6回まで(40歳~43歳未満の方は3回まで)なので、

採卵については、移植できる受精卵ができるまで

回数制限なく保険適用内でチャレンジできます。

こういったメリットもありますので、

今まで費用のことが気になっていた方は、

保険適用内の治療で受精卵ができる見込みがあるようでしたら

まずは保険適用でチャレンジされてはいかがでしょうか。

 

費用も気にはなるけれども

自分に適した治療をすすめてもらいたい気持ちがある方、

今までの経過から

オーダーメイドで細やかな治療をご希望の方は、

先生と十分に相談して

納得した治療をすすめていただけたら…と思っています。

 

気になることや分からなくて困ることは、

是非ご相談くださいね。

 

 

臨床心理士  間塚

 

 

 

 

 

 


2022.04.25

GWのお知らせと、男性の災難への女性の反応。

 

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もうすぐゴールデンウィークですね。

もしかして10連休の方もおられるんですかね。

ちなみに、当クリニックはカレンダー通り、

30日(土)、2日(月)、6日(金)、7日(土)は

診療しております。

ゴールデンウィーク中なら

パートナーさんと一緒に受診できる方もおられるかもしれません。

パートナーさんと一度一緒に来てくださいと

先生から打診されているみなさま、

この機会にいかがでしょうか。

また、逆にゴールデンウィークは忙しい!

というみなさまは、

また落ち着いた頃にいらしてくださいね。

 

 

知人の男性に血尿の症状があって

尿道の内視鏡検査をしたんですって。

検査のとき

服を脱いで

内診台と同じような台に寝ると、

腰あたりにカーテンが引かれて

足元を開いた状態で固定されて、

まず麻酔ゼリーを尿道に入れられて

そこへ内視鏡を入れたらしいのですが…

ものすごく痛かったらしく(叫びまくっていたらしいです)

内診台みたいな足が開いた状態も嫌だったみたいで

もう二度とやりたくないって言ってました。

 

けれど、この話を女性にしても、

あまり同情されないんですって。

「女性はいつも足広げて検査してる」

「子宮体ガン検査だって痛い」

とか、そういう感じの感想なんですって。

そしてだいたいの女性は爆笑するらしいです。

 

一方、男性にこの話をすると、

「うわあああああああああ!痛そう!!

 絶対やりたくない~!!」

と、だいたいの人が悲痛な表情を浮かべるらしいです。

 

私もだいたいの女性と同じように、

「女性はいつも…」と言ってしまいました。

やっぱりどこかで

「女性ばっかりこういう検査して…」

「女性の気持ちが少しは分かったか!」

という気持ちがあったんだと思います。

そして、もちろん爆笑していました。

 

 

それで、その人に

「妊娠のために卵管の検査があるんだけど…」

と、検査の説明したら、

「痛そう…」と大変さがわかるような表情をしたんですよ。

そこで、

「もし尿道の内視鏡してなかったら、

 卵管の検査の理解度って違ったと思う?」

と聞いてみたら

「…うん…。違うだろうな。」

と言っていました。

 

男性に女性ならではのことを分かってもらうのって

難しい部分がどうしてもあると思うんですよね。

女性が男性ならではのことを理解するのも

難しいのと同じように。

今回のように似たような体験があれば

より実感に近い想像ができるのかもしれませんが。

 

自分がどんな体験をしているのかは知っておいてほしい。

本当は分かってほしい。

分かってもらえないと、悲しいような感じがするかもしれません。

 

自分が体験をどう感じているのか

知ってもらう努力をすることは大前提として、

“相手のことを分かることは難しい

 相手に分かってもらうことは難しい”

ということを知っておくことも

こころの救いの一つになるような気がしています。

 

 

 

臨床心理士  間塚

 

 

 

 

 

 

 

 

 


2022.04.19

体験をシェアできる関係。

 

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妊娠までの道のりについてブログを開設したり、

SNSで本名とは別のアカウント作って

妊娠希望している人たちと交流したり、

妊娠に関する情報をフォローしている方って

そこそこおられるような印象があります。

 

みなさん、すごいですよね。

自分にとって

今必要なものを

ちゃんと求めていける力があるんですね。

 

似たような体験をしている人と

お互いの体験をシェアできるって、

安心したりホッとする場なのではないでしょうか。

 

願った結果が出なかったときや

職場や家族、友人との関係で、

何度も「グサッ」「ズキッ」とくる体験を

されていると思うんですが、

似たような体験をしている人の間では

体験していない人にはわからないことも

言葉にしなくてもわかってもらえる感じがしたり、

相手のことを思い遣った交流ができますね。

いつもはこころにバリケードを張っているかたも

ここでは解けているような気がします。

 

パートナーさんに大きな不満はないけど、

わかってくれる人にはいいたくなるプチ不満なんかも

こういうところで解消できそうですよね。

診療内容、注射や処置の感想なども、

詳しくやりとりなされているんじゃないでしょうか。

自分の状況を普通に話せる関係は

とても支えになるんですよね。

 

そして、もうひとつ。

あなたがが誰かをを励ましたりすることもあると思うんですが、

この体験って、ものすごく大きいと思うんです。

誰かが頼ってくれることは

(頼られる内容や限度があるにせよ)

うれしく感じることが多いですし、

励まして元気だしてもらえると

喜びも大きくなるでしょう。

それに、

励ましは相手のかたへの想いではあるけど、

自分自身への想いでもあると思うんです。

そういった体験が

自分を癒すことにつながっているんじゃないでしょうか。

 

ただ、この妊娠希望中のコミュニティは、

みなさんも気がかりではあると思うのですが、

ずっと続くものではないかもしれません。

誰かが妊娠、無事出産となると、

今までと同じようなつきあいでは

なくなってしまうこともあるからです。

 

あなたが妊娠したときは

居心地悪い気分になるかもしれませんし、

周りのかたが妊娠したときは

さびしい気持ちが出てくるかもしれません。

妊娠したいし、妊娠してほしいけど、

なかなか複雑なところですね。

 

でも、それまでに、

お互い支えになっていたことは

ほんとうですし、

誰かが妊娠したからって

その経験がなくなるわけではないですよね。

 

それに、人とのおつきあいって

人生のいろんな時期で

変わっていくと思うんです。

 

ある時期に誰かとものすごく近い関係になって、

時が移ろえば

また別の人とつながったり

別の人との関係が深まったり、

そういうふうに変化しながら

つながり続けるものかなあとも思います。

 

なので、時には誰かの助けになったり、

今必要な誰かを頼ったりしながら、

今は今のつながりを

大切にしていきましょう。

 

 

 

 

臨床心理士  間塚

 

 

 

 

 

 


2022.04.11

うらやましく思って、当然だと思います。

 

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この写真は1週間前に撮ったものです。

たった1週間でずいぶん桜の花は散り

青々しい葉が出てきていますね。

 

こんにちは。

 

さて、

友だちが妊娠したときの心情を巡るお話が

カウンセリングルームで

一番よくおうかがいするトピックのように思います。

 

「友だちが妊娠して

 言葉ではおめでとうって言ったけど

 内心喜べないんです」って、

今まで本当にたくさん聞きました。

 

そういう気持ちに自分がなることが

どうにも耐えがたくって、

泣くつもりはなかったのでしょうけど

感情がこみあげて

涙を流される人も少なくないんです。

 

私はいつも聞きながら思っていました。

本気で妊娠を願っている場合や

切実に妊娠を願っている場合は特に、

妊娠した友だちをうらやましく思う気持ちや

自分が置いていかれているような気持ちは、

自然と抱くものじゃないかな、と。

 

似たような出来事としては

友だちと同じ人に好意を寄せていて

相手の人が友だちを選んだ場合、

友だちと一緒に同じ職場に面接にいって

友だちだけ採用になった場合、

ものすごく気に入ったマンションが

売約済で契約できなくて

友だちがそのマンションに入っていた場合、

などが考えられますが、

いかがでしょうか。

 

そういったことは

これまでも起こったかもしれないし

これからも起こるかもしれません。

 

もしかしたらこの先、

友だちの子どもと

自分の子どもを

比べてしまうこともあるかもしれませんよね。

(親が子どもを誰かと比べると

 子どもにとっては心が緊張しますし

 条件つきで愛される体験になってしまうので、

 こうなる事態は避けられることを願っています…)

 

「よそはよそ、うちはうち」

「他人(ヒト)は他人、自分は自分」

と、よく言われますよね。

きっと、そう思えず苦しいときがあるからこそ、

そういうふうに言い聞かすのではないかな、と想像しています。

 

また、「友だちに命が宿ったんだから!」と、

「命」や「生命」は絶対的に喜ばれるべきもの!と

ものすごく強く思っている方がおられるように思います。

受け継がれていく命を喜べない自分って

ものすごくこころがせまいんじゃないかって

自分にがっかりしたり自分を嫌になられてしまうんです。

 

友だちだからって

命や生命のことだからって

「こう思わなきゃいけない」

と、決まってはいないと思うんです。

その時々の、相手と自分との関係性や

自分の価値観、状況などから

素直な気持ちがわいてくるので、

今の自分にはその気持ちが本当だと思うんです。

 

「こういう時はこう思うべきなのに」とか

「こう思える自分でいたいのに」という自分には

ちょっと待っていてもらって、

今の自分が素直に感じることを

「そうかあ。私、この状況をそう感じるんだなあ」

と、否定せずに、今は可愛がって受けとめてみられませんか。

 

 

 

 

臨床心理士  間塚

 

 

 

 

 

 


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